忙しさにまぎれ、家のことを後回しにしていたが、遅ればせながら家の周りの冬支度に取りかかった。私の主な担当は、玄関先の柘植(つげ)の剪定と松の雪吊り(ゆきつり)、さらにほとんど葉が落ちてしまった楓(カエデ)の伸びた枝の切り落とし。中でも毎年気を遣うのが一本松の葉の剪定と雪吊りだ。父亡きあと、かれこれ30年近くやってきたが、納得のいく(見栄えのする)仕上がりにはなかなかならない。
雪吊りといえば、雪の多い東北や北陸地域では定番で、金沢の兼六園が全国的に有名だ。例年11月に500本をこえる樹木に雪吊りが施され、冬の兼六園は何とも言えない風情がある。思うに、雪吊りは単に樹木の枝を雪の重みから守るだけでなく、冬の風物詩として人々の目を楽しませるものでもある。縄が円すい状にピンと張り、どの角度から眺めても綺麗な形に見える松と比べると、我が家の松が何とも恥ずかしく思えてくる。
松の雪吊りが一段落し、落ち葉や切り枝を片づけていたときである。ふと真っ赤なカエデの葉が目に留まり、これはもしかして紅葉(モミジ)ではないのかという疑問が起こった。そもそも、カエデとモミジはどう違うのか、同じなのか、気になって調べてみると、これまた意外なことがわかった。どちらも植物の分類上は「カエデ科カエデ属」で同じだが、葉の切れ込みが深いカエデを「モミジ」と呼び、葉の切れ込みが浅いカエデを「カエデ」と呼ぶとのこと。
つまり、私がこれまでカエデと呼んでいた我が家の樹木は実はモミジだったのだ。ということは、広島の有名なお土産である「もみじ饅頭」は、その形からするとどちらかと言えば「カエデ饅頭」に近いような気がしてきた(とは言え広島県の県花・県木はモミジで、もみじ饅頭発祥の地・宮島はモミジの名所である)。私が高校生の頃、漫才ブームが巻き起こり、B&Bが「もみじまんじゅ-」と連呼していたのも今となっては懐かしい。