師走も半ばを過ぎ、クリスマスが近づいてきた。そもそもクリスマスとは、イエス・キリストの降誕を記念する日である。日本では、1552年山口でカトリック教会の宣教師が日本人の信徒を招きキリスト降誕祭のミサを行ったのが、初めてのクリスマスと言われている。時代を経て、明治の終わりから大正にかけ、(不二家のケーキ戦略も功を奏し)日本でクリスマスが受け入れられるようになり、昭和以降、年中行事として定着した。
クリスマスと言えば、ケーキの他にも、ツリー、サンタ、プレゼントなどが思い浮かぶが、いつ頃からか、若者の間でクリスマスの前夜(イブ)は「恋人と過ごす」ことが定番になった。学生時代(バブル初期の頃)、私の友人で、彼女のために高級フレンチのフルコースを予約し、高価なブランドの光り物を用意してイブに備えていた者もいた。私のほうは、仲間同士で集まってにぎやかに「クリパ」を開くことのほうが多かったような・・。
ちょうどその頃、JR東海が「Xmas Express」と銘打って、山下達郎の「クリスマス・イブ」をBGMとしたテレビCMを流し始めたのだ。第一弾は深津絵里、第二弾は牧瀬里穂、シリーズ最後は吉本多香美だったと記憶している。このCMのおかげで、「クリスマス・イブ」は空前のヒットを記録し、今日に至るまでクリスマスの定番ソングとして歌い継がれてきた。「クリスマスソング」(back number)、「いつかのメリークリスマス」(B‘z)、「雪のクリスマス」(ドリカム)、「メリクリ」(BoA)などもいい曲だが、「クリスマス・イブ」には敵わない、と私は思う。
「クリスマス・イブ」の歌詞自体は、CMのように「待っていた彼がやって来る」というものではなく、「いくら待っても彼女は来ない」悲しい曲なのである。この時期、この曲がやたら心に染みる人たちが世の中にはたくさんいるのであろう。そう言えば、辛島美登里の「サイレント・イブ」も好きな彼との別れを決意する悲しい曲だ。そんな人たちは、「恋人がサンタクロース」(ユーミン)でも聴いて、いずれ現れるサンタさんを待つことにしよう。