先週、福光で南砺ユネスコ協会の総会に出席し、国道304号線で学校へ戻る途中、梨谷トンネルを抜けた小来栖(こぐるす)というところで、一年ぶりに人形山(にんぎょうさん)の雪絵「ひとかた」を目の当たりにした。皆さんは、雪絵(雪形)というものをご存知だろうか。雪絵とは、山肌の残雪やそこから覗く岩肌などの形を、人や動物などの形に例え名前がつけられたものをいう。県内では、五箇山の人形山、魚津の僧ヶ岳の雪絵が有名だ。
そもそも人形山(標高1726m)という山は、雪絵の名前「ひとかた」がそのまま山の名前になったようだ。魚津の僧ヶ岳や長野県の白馬岳も同様だ。学校の校歌には、その地域を代表する山野河海が歌詞に詠み込まれることが多いが、本校の校歌にも人形山がしっかりと登場する。この地域で古くから親しまれてきた山であるが、人形山の「ひとかた」には悲しい言い伝えがある。
人形山の「ひとかた」は、手をつないだ姉妹のように見えると言われている。五箇山の平地域に伝わる民話では、親思いの姉妹が母親の病気が治ったお礼に山頂にある権現堂にお参りに行ったそうだ。昔から高い山は神聖な場所で女性は登ってはいけないとされており、「女人禁制」を破った祟(たた)りからか、突然の吹雪で姉妹は行方知れずとなった。以来、春になると「ひとかた」となって現れると伝えられてきた。
かつて『まんが日本昔ばなし』というテレビアニメがあった(1975~1994年)。調べてみると、1982年3月27日(第533回)「人形山」というタイトルで、五箇山の健気で悲しい姉妹の話が全国のお茶の間に放送されていた(先日ユーチューブでも見ることができた)。このアニメのナレーションを担当していたのが市原悦子や常田富士男で、オープニング曲がその名も「にっぽん昔ばなし」(花頭巾)というタイトルだった。このような素晴らしいテレビアニメを、令和の現代においても再び放送してもらいたいものだ。