2学期の始業式は9月1日だが、すでに授業が始まっており、実質的に夏休みは終わった。先日の郷土芸能部による「国立劇場」での優秀校東京公演はこの夏を締めくくる一大イベントとなり、本校の歴史にまた一つ新たなページが刻まれた。私も初めて国立劇場に足を運び、最優秀賞・文部科学大臣賞に相応しい、堂々とした部員たちの舞台を目に焼き付けた。部員たちにとっても、忘れることのできない夏となったに違いない。

 毎年、夏の終わりが近づくと、何となく聴きたくなる曲がある。フジファブリックの『若者のすべて』という曲だ。この曲は、2007年11月にリリースされたが、作詞・作曲者でフジファブリックの元ボーカリスト・ギタリストだった志村正彦はすでにこの世にいない(2009年12月24日、29歳という若さで急逝)。志村は山梨県富士吉田市の出身で、曲中の「花火」は、彼の地元である河口湖で上がる花火をイメージしているとのこと。

 この曲の素晴らしさは、夏の終わりの切なさや感傷的な気分を歌いながらも、曲名が「花火」や「夏の終わり」ではなく、『若者のすべて』であること。そして、その後数多くのミュージシャン(藤井フミヤ、桜井和寿、草野マサムネ、槇原敬之、柴咲コウほか)がカバーしているが、やはり志村正彦が歌う『若者のすべて』が一番心に刺さるということだ。特に「夕方5時のチャイムが今日は何だか胸に響いて」という歌詞にはグッとくる。

 ところで、この『若者のすべて』が今年度から高校音楽の教科書(「MOUSA1」教育芸術社)に歌唱教材として掲載されることとなった。本校でもこの教科書を採用しており、1年生音楽選択者はすでに授業で習ったかもしれない。教科書に載るほどの作品として認められたということであり、私としても大変うれしい。ちなみに、教科書のタイトルである「MOUSA(ムーサ)」とは、ギリシア神話に登場する文芸・学術の女神で「ミュージック」「ミュージアム」の語源でもある。