9月に入ったとはいえ、依然として暑い日が続いている。秋の訪れはまだ先のようだ。そこで、「夏の終わり」をもう少し楽しむ(と言うか、夏の余韻に浸る)ため、この時期に相応しい曲をいろいろと聴いてみた。私にとって夏の終わりのバラードと言えば、サザンオールスターズをはじめ、稲垣潤一『夏のクラクション』、山下達郎『さよなら夏の日』、井上陽水・安全地帯『夏の終わりのハーモニー』などが定番だ。

 中でもサザンの『真夏の果実』や『TSUNAMI』はこの時期につい聴きたくなる曲ではあるが、私的には『Ya Ya(あの時代を忘れない)』(1982年)が一番のお気に入りだ(夏の終わりというより、秋の曲かもしれないが・・)。この曲のイントロが流れた瞬間、学生時代の自分に一気に引き戻され、楽しかった大学生活のさまざまな思い出がまるで昨日のことのように次々と脳裏に浮かんでくる。

 『Ya Ya』を聴いて学生時代を鮮明に思い出すのは、きっと当時のテレビドラマ『ふぞろいの林檎たち』(TBS系、脚本:山田太一)の影響に違いない。このドラマは、学歴社会を背景に、中井貴一、時任三郎、柳沢慎吾らが演じる四流大学生たちの恋愛模様、家族や社会との軋轢(あつれき)を描いたものだったが、ドラマの主題歌が『いとしのエリー』で、挿入歌には『Ya Ya』をはじめサザンの名曲がふんだんに使われていた。

 都会の高層ビルを背景に、手前で林檎を放り投げるドラマのオープニングシーンも、40年近くたった今でもよく憶えている。自分を少しでもよく見せたいと思う若者の気持ち、現実の社会の厳しさ、親との衝突、かけがえのない友達、いろいろなことを考えさせられたドラマだった。今では当たり前のケータイやスマホもない時代。女の子と連絡をとるのも一苦労だったが、何かと不自由だったあの時代(とき)を忘れることはできない。